令和元年10月1日に「改正水道法」が施行されました。水道法とはもちろん水道事業についての法律ですが、この改正によって、重要なライフラインである水道事業がどのように変わったのかをまとめます。

なぜ、水道法を改正する必要があったのか?

 今回の水道法の改正の背景には、「人口減少による水の需要の減少」と「水道施設の老朽化が深刻化し、設備の更新が急務」になっているといった現状があります。水の需要が減れば水道料金による収入が減り、設備の更新に多くのお金がかかります。水道事業を運営している自治体は、このダブルのマイナス要因によって行き詰っているのです。この状況をなんとかするために改正が行われました。

水道法はどのように変わったのか?

法律改正の概要は下記の5つの項目です。

  • 関係者の責務の明確化
  • 広域連携の推進
  • 適切な資産管理の推進
  • 官民連携の推進
  • 指定給水装置工事業者制度の改善

以下、個別に解説します。

関係者の責務の明確化

 今回の法律改正の目的は「水道基盤の強化」です。これを推進するために、国や都道府県といった自治体は民間企業にも参加してもらって進めていこうとしています。しかし、運営する権利は「民間」にすることもできるようになりますが、あくまで水道施設自体の所有は「自治体」です。つまり、施設自体を民間に売ってしまう民営化ではありません。

広域連携の推進

 全国の自治体が手掛ける水道事業は約1300あります。このうち、給水人口が5万人未満のところが900以上あり3割以上が赤字になっています。現状は各自治体が個別に施設を運用しているため、儲かっている自治体と儲かっていない自治体の差が激しいのです。そのため、水道料金も地域によってバラバラなのです。今後は供給している水量が少ない施設は統合して事業の効率化をおこない、コストを下げていくことが求められます。これが「広域連携」です。

適切な資産管理の推進

 水道設備は高度成長期に整備されたものが多く、老朽化が進んでいます。各家庭に給水する配管も耐用年数を過ぎて劣化したものが増え修繕が追いついていない状態です。
 修繕するにも多くのお金がかかります。自治体としては、これが大きな課題です。民間の力も借りて、メンテナンスや修繕をやっていくことが期待されます。

官民連携の推進

 今回の法律改正の目玉となる部分です。「コンセッション方式」といった方法を導入することができるようになります。これは、自治体が水道の施設を所有し、経営方針の決定権も自治体が持ったまま、民間に設備の運営・管理をしてもらうスタイルです。また、運営面で価格競争も進められるため、メンテナンスや修繕費用を捻出するとのことも可能です。

指定給水装置工事業者制度の改善

 平成8年に水道事業者の新規参入者への規制を緩和したために、質の悪い工事業者も多数入ってきました。さらに、新規登録後は更新手続きもありませんでした。そのため、法改正により給水装置工事事業者の指定が5年毎の更新制となりました。
 水道工事事業者の指定には、給水装置工事主任技術者の設置が必要となりますが、水道事業を運営する自治体は、事業所の状況とともに技術者の状況についても、5年毎に確認を行うことになっています。